皆さん、こんにちは。
登録支援機関として、日々外国人雇用をサポートしている行政書士・税理士の山田勝義です。
特定技能外国人の採用・受け入れにおける法令遵守体制の構築は、企業の持続可能な成長と特定技能外国人の権利保護の両面で極めて重要です。
本稿では、所属機関に求められる特定技能外国人の適切な管理体制構築のための重要なポイントを解説していきます。
受入れ体制の整備と責任者の設置
特定技能外国人の受入れにあたっては、まず社内の受入体制を明確に整備する必要があります。特定技能外国人受入責任者を選任し、その役割と権限を明確に定めることが重要です。
責任者には以下のような人材を選任することが望ましいです。
①人事労務管理の実務経験が豊富であること
②外国人の採用や管理に関する基本的な法令知識を有していること
③組織内での調整力や問題解決能力が高いこと
④異文化コミュニケーションに理解があること
⑤管理職クラスの人材であること
⑥在留資格関連の手続き、労務管理、生活支援等を統括できること
⑦関係部署との連携を図れること
実務担当者を適切に配置する必要もあります。実務担当者には以下の人材を選任することが望ましいいです。
①責任者との報告・連絡体制を確立できること
②人とのコミュニケーションスキルが高いこと
③粘り強く丁寧な対応ができること
④出入国在留管理法令や労働関係法令についての実務知識を習得する意欲を持った人材であること
これらの人材を配置することが重要で、円滑な受入体制を構築することができます。特に重要なのは、所属機関が定期的な研修や勉強会を実施し、実務担当者含めた職員全体の知識とスキルを継続的に向上させることです。
受入責任者・実務担当者ともに、特定技能外国人の文化的背景や習慣への理解を深め、誠実かつ公平な対応を心がける姿勢が不可欠です。
関係行政機関や支援団体との良好な関係構築にも努め、必要に応じて専門家のアドバイスを受けられる体制を整えることも重要な役割となります。
緊急時対応フローを整備し、夜間休日の連絡体制を確立することで、突発的な事態にも適切に対応できる体制を構築することが求められます。
特定技能外国人雇用における社内規程整備の重要性
法令遵守のための社内規程の整備
特定技能外国人の雇用に関する社内規程を整備することは、法令遵守の基盤となります。
特定技能外国人の所属機関にとって、法令遵守は信頼を守るだけでなく、安定した雇用環境を築くための基盤です。そこで重要となるのが、社内規程の整備です。
今回は、その具体的なポイントについて解説します。
社内規程整備の主なポイント
①就業規則への特定技能外国人に関する規定の追加
特定技能外国人の就業条件や契約内容を明記する規定を設けることで、外国人労働者も安心して働ける環境を提供できます。
就業規則への特定技能外国人に関する規定の追加、賃金規程の整備、安全衛生管理規程の多言語化など、必要な規程を整備・改定する必要があります。
②賃金規程の見直しと整備
同一労働同一賃金の原則に基づく待遇の確保、労働時間管理、休暇制度などについて、明確な規定を設ける必要があります。特定技能外国人と日本人従業員の待遇に差がないよう明確な賃金規定を設定します。これらの規程は定期的な見直しと更新が必要です。
③安全衛生管理規程の多言語化
労働環境の安全確保はすべての従業員にとって重要です。外国人従業員にもわかりやすいよう、多言語で規程を整備する必要があります。法改正や社会情勢の変化に応じて、適宜規程を改定し、その内容を全従業員に周知徹底することが重要です。
④労働時間管理と休暇制度の明確化
適正な労働時間管理や休暇制度の整備は、従業員の健康を守るための基本です。これらのルールは、特定技能外国人にも公平に適用されるべきです。規程の運用状況を定期的に監査し、必要に応じて改善を図ることで、実効性のある管理体制を維持することができます。
規程を実効性のあるものにするために
整備した社内規程をただ設けるだけではなく、定期的な見直しと周知徹底が必要です。以下のステップを実行することで、規程の実効性を高めることができます。
①法改正や社会情勢の変化に応じた改定
労働関連法規は定期的に変更されるため、それに合わせた規程のアップデートが不可欠です。
②従業員への周知とトレーニング
新しい規程や変更点を全従業員に説明し、特に外国人従業員にも理解してもらえるよう、多言語でのガイドラインや研修を実施しましょう。
③規程の運用状況を定期的に監査
実際の運用が規程に基づいているか、定期的に確認し、問題があればすぐに改善する仕組みを整えます。
特定技能外国人の雇用を成功させるには、法令遵守と公平な待遇の実現が欠かせません。
社内規程をしっかり整備し、適切に運用することが重要ですので、定期的な見直しと従業員への周知を徹底し、全員が安心して働ける職場環境を目指しましょう。
入国・在留管理の徹底について
特定技能外国人の所属機関には、入国から在留期間中まで法令に基づいた管理と適切な手続きが求められます。ここでは、所属機関が押さえるべき重要ポイントを詳しく説明します。
①入国前の手続き
特定技能外国人が入国するためには、在留資格認定証明書の交付申請を行う必要があります。この申請には、以下の書類を揃える必要があります。
1.雇用契約書・雇用条件書
所属機関 (雇用者)と特定技能外国人の間で結ばれる雇用契約の内容を明記したものです。雇用条件 (給与、就業時間、福利厚生など)が適切であることを確認し、明確に記載してください。
2.実施計画書
特定技能外国人が働く上で必要な支援計画や研修計画を記した書類です。これには、職場での指導体制や生活支援内容を具体的に示す必要があります。
3.技能試験・日本語試験の合格証明書
特定技能の基準を満たしていることを証明するための書類です。技能試験と日本語試験の両方が必須であるため、漏れがないように確認してください。
4.健康診断書
規定項目を全て網羅した健康診断書 (発行3ヶ月以内)が必要です。出入国在留管理庁が提供する参考様式を利用することをお勧めします。
5.パスポートの写し
本人確認書類としてパスポートの写しが必要です。有効期限も確認しましょう。
これらの書類に不備があると申請が遅れる可能性があるため、正確で迅速な準備を心掛けましょう。
②入国後の手続き
特定技能外国人が入国した後には、以下の手続きが必要です。
1.在留カードの確認と保管
在留カードは、外国人が日本に在留する間の身分証明書として重要な役割を果たします。入国時に発行された在留カードの有効期限を確認し、そのコピーを保管してください。
記載内容 (氏名、住所、在留資格、就労制限の有無など)に変更が生じていないか、定期的に確認することも重要です。
2.在留期間の管理
在留期限を把握し、更新手続きが必要な場合には余裕を持って準備を進めます。特定技能外国人の住居地が確定した場合には、14 日以内に自治体へ届出を行う必要があります。これを怠ると法的リスクが発生するため注意が必要です。
③在留期間更新の手続き
特定技能外国人が引き続き就労する場合、在留期間更新の手続きが必要です。この手続きは、在留期限の 3 ヶ月前から可能で、以下の書類を準備します。
1.雇用契約書 (更新版)
契約を更新した場合、その内容を記載した書類が必要です。更新後の雇用条件が変更されている場合は、その内容が正確に記載されていることを確認してください。
2.給与明細や納税証明書
特定技能外国人が適切な報酬を受け取り、税金が適切に納付されていることを証明するための書類です。給与明細は直近数ヶ月分を揃えましょう。
3.技能習熟度を示す資料
雇用期間中に取得した資格や研修実績などを記録した資料が必要です。特定技能外国人が職務に必要な技能を習得していることを示すために役立ちます。
計画的に書類を整備し、提出期限に間に合うよう対応しましょう。
④届出・報告の期限管理
特定技能外国人材に関する各種届出や報告は、期限を守って実施する必要があります。
1.雇用条件の変更、住所変更、離職時の届出
雇用条件が変更された場合や外国人材が転居または離職した場合には、14 日以内に出入国在留管理局へ届出を行います。雇用契約が変更された際には、新しい条件が特定技能の基準を満たしているかを確認することも重要です。
2.活動状況の定期報告
雇用主は四半期ごとに、外国人材の就労状況や報酬の支払い状況、活動の実施状況を出入国在留管理局に報告する義務があります。この報告を怠ると、所属機関としての信頼に関わるため、正確で漏れのない報告を心掛けましょう。
⑤管理体制の構築
円滑な在留管理を行うため、以下の体制を整えることが効果的です。
1.チェックリストやカレンダーの活用
各種手続きの期限を視覚的に把握できるようにすることで、手続き漏れを防ぎます。例えば、在留期限や四半期ごとの報告時期をカレンダーに記載し、リマインダーを設定しておくと便利です。
2.在留管理台帳の作成
在留カードの有効期限、雇用契約期間、社会保険の加入状況、各種届出の提出状況などを一元管理できる台帳を作成します。この台帳は担当者が簡単に確認・更新できるような形式に整備してください。記録は特定技能外国人が帰国後も最低 1 年間保管することが求められるため、文書管理体制を適切に整えましょう。
⑥登録支援機関との連携
登録支援機関は、特定技能外国人材の受け入れに関する煩雑な手続きをサポートしてくれる心強いパートナーです。
支援業務を登録支援機関に委託することで、所属機関の負担を軽減し、より効果的な管理体制を実現できます。
入国・在留管理の取り組みを徹底することで、特定技能外国人の受け入れがスムーズに進み、特定技能外国人に働きやすい環境を提供することが可能になります。
労務管理体制の確立
特定技能外国人材の労務管理においては、日本人職員以上に丁寧な対応が求められます。
労働時間の適正な記録と管理、残業時間の上限の遵守、休日・有給休暇の取得促進など、労働基準法に則った管理を徹底します。
賃金の適正な支払い、社会保険への加入、労働保険の適用など、法定の福利厚生面での対応も確実に行う必要があります。
注意が必要なのは、労働条件の変更や、各種手当の支給に関する取り扱いです。
これらの変更を行う際には、事前に十分な説明を行い、特定技能外国人の理解を得ることが重要です。
労働基準監督署による調査への対応を想定して、必要な書類や記録を適切に保管・管理することも忘れないようにしてください。
安全衛生管理の強化
職場における安全衛生管理は、言語や文化の違いを考慮してより慎重な対応が必要です。
安全衛生教育の多言語での実施、作業手順書の翻訳、危険箇所の多言語表示など、特定技能外国人が安全に働ける環境整備が重要です。
定期的な健康診断の実施と結果に基づく適切な措置、メンタルヘルスケアの提供なども、重要な管理項目となります。
職場巡視の実施と改善活動の展開も重要です。定期的な職場巡視により、潜在的な危険要因を特定し、必要な対策を講じることで、労働災害の予防に努めます。
万一の事故発生時に備えて、緊急時対応マニュアルの整備や、定期的な避難訓練の実施なども欠かせません。
生活支援体制の整備
特定技能外国人材の生活支援は、安定した就労継続のために不可欠です。
住居の確保、銀行口座開設の支援、日本語学習支援、医療機関受診時の通訳支援など、生活全般にわたるサポート体制を整備する必要があります。
日本の生活習慣や文化に関する情報提供、地域社会との交流支援なども、重要な支援項目として位置づけられます。
生活上のトラブル予防と早期解決のための支援体制です。地域の行政サービスや生活ルールの説明、近隣住民とのコミュニケーション支援など、きめ細かな対応が求められます。
災害時の対応や防災教育なども、重要な支援項目として計画的に実施する必要があります。
コミュニケーション体制の構築
特定技能外国人との円滑なコミュニケーションを確保することは、適切な管理体制の基盤となります。
通訳・翻訳支援の体制整備、多言語での情報提供、定期的な面談の実施など、コミュニケーションツールと機会を適切に設定する必要があります。
職場での意思疎通を円滑にするため、日本人職員への異文化理解研修なども効果的です。
特定技能外国人の意見や要望を積極的に収集し、職場環境の改善に活かすことも重要です。
定期的なアンケート調査や意見交換会の実施、提案制度の整備など、双方向のコミュニケーションを促進する仕組みづくりが求められます。
SNS アプリを活用した日常的なコミュニケーションツールの整備も検討に値します。
まとめ
特定技能外国人材の受入れにおける法令遵守体制の構築は、単なる規則の遵守にとどまらず、所属機関の持続的成長と外国人材の安定した就労・生活の実現に直結する重要な取り組みです。
適切な管理体制を構築・運用することで、外国人材の能力を最大限に活かし、企業の競争力強化につなげることができます。
これらの体制構築は専門的な知識と経験を要する取り組みであり、多くの企業にとって大きな課題となっています。
そこで、登録支援機関による専門的なサポートの活用をお勧めします。登録支援機関は、特定技能外国人材の受け入れに関する豊富な知識と経験を有しており、所属機関の実情に応じた最適な管理体制の構築を支援することができます。
私たちは、行政書士による的確なアドバイスと支援が可能な登録支援機関です。
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