皆さん、こんにちは。
登録支援機関として、日々外国人雇用をサポートしている行政書士・税理士の山田勝義です。
「えっ、そんなつもりじゃなかったのに…」外国人と働く現場でよく聞かれるため息です。
日本の職場に新しく加わった外国人スタッフと、受け入れる日本人スタッフ。お互いの文化や習慣の違いから、思わぬすれ違いが起きることがあります。
でも、心配はいりません。ちょっとした工夫で、そんな誤解は解消できるんです。
本記事では、現場でよくある具体的な事例をもとに、特定技能外国人とのスムーズなコミュニケーションのコツをご紹介します。
相互理解を深め、円滑で生産性の高い職場環境を築くための参考にしてください。
思わぬすれ違い その1:「なぜ敬語を使わないの?」
ある製造現場で、ベトナム人スタッフのAさんは日々真面目に働いていました。
ところが「Aさんはタメ口で話す」という理由で、日本人社員から注意を受けることが増えていきました。Aさんの母国では年齢差による言葉遣いの区別がほとんどなく、敬語の概念自体がなかったのです。
この課題を解決するため、その会社では「よく使う敬語フレーズ集」を作成して、外国人に配布しました。
「語尾に、です・ますをつける」「〜してください」「〜できますか?」といった基本的な表現を、実際の場面に即して練習する機会も設けました。
その結果、Aさんは言葉遣いの違いに気づき、徐々に適切な言葉遣いを身につけ、職場での人間関係も改善されていきました。
解決方法
①文化交流の場を設ける
職場内で定期的に文化交流の場を設け、それぞれの文化的背景や習慣について共有する機会を作ることは非常に有効です。
②敬語の基本ルールを教える
敬語の基本的なルール(尊敬語、謙譲語、丁寧語の違いなど)を分かりやすく説明する研修や資料を提供します。職場でよく使う表現(「〜してください」「〜ますか」など)に焦点を当てると実践的で効果的です。
③ロールプレイングを取り入れる
実際の場面を想定したロールプレイングを通して、敬語の使い方を練習する機会を設けます。
これにより、外国人は自信を持って敬語を使えるようになります。
④日本人側の意識改革
日本人も、外国人が完璧な敬語を使えなくても、コミュニケーションを取ろうとする努力を評価し
温かく見守る姿勢が重要です。間違いを指摘する際も、相手の気持ちを考慮し丁寧に説明するよう
心がけましょう。
思わぬすれ違い その2:「約束の時間に遅れるのはなぜ?」
「またか…」午前8時半始業の製造現場で、日本人管理者はつぶやきました。
インドネシア人スタッフのBさんが、始業時間に来ていなかったのです。
結局Bさんは10分遅れで出社してきました。Bさんにとって「10分程度の遅れ」は遅刻という意識はなく、大きな問題と考えていませんでした。
母国では、交通渋滞や突然の雨で数分の遅れは日常茶飯事です。
むしろ定刻ピッタリや早めに到着することの方が珍しいくらいだったのです。
この課題に直面したある企業では、ユニークな取り組みを始めました。
入社時のオリエンテーションで「なぜ日本企業は時間を重視するのか」について、製造ラインが止まることによる経済的損失や、他のスタッフへの影響を具体的な数字で示したのです。
同時に通勤ルートの下見や、最適な出発時間の計算を外国人と一緒に行いました。
その結果、Bさんは徐々に日本の時間感覚を理解し、余裕を持った行動を心がけるようになりました。
「今では私の方が日本人より早く来ているんですよ」と、Bさんは笑顔で話します。
解消方法
①時間厳守の重要性を明確に伝える
入社時研修などで、日本の職場における時間厳守の重要性とその理由(業務の円滑な進行、他者への
配慮など)を具体的に説明します。
②具体的な時間管理方法を教える
時間管理の具体的な方法 (タイムスケジュールの作成、アラームの設定など)を教えることで、外国人
の時間管理能力向上を支援します。
③遅刻した場合のルールを明確にする
遅刻した場合の報告手順やペナルティなどを明確に定め、事前に周知することで、無用なトラブルを
防ぎます。
④柔軟な対応も検討する
個々の事情(交通機関の遅延など)を考慮し、状況に応じて柔軟に対応することも大切です。
ただし、ルールを逸脱するような対応は避け、公平性を保つようにしましょう。
思わぬすれ違い その3:「指示が通じているはずなのに…」
「確かに『わかりました』と言ったのに…」と、もやもやする日本人リーダー。
食品工場で働くネパール人スタッフのCさんは、日本語での会話にも慣れてきた頃、ある作業で大きなミスをしてしまいました。
指示を出した日本人リーダーは困惑します。「『わかりました』と返事があったのに、なぜだろう?」
実は、多くのアジア圏の人達は、目上の人に「わからない」と言うことが失礼にあたると考えられています。そのため、理解できていなくても、とりあえず「はい」と答えてしまうことがあるのです。
日本語の理解力が不十分で、よくわからないけれど「はい」と答えてしまうことも多々あります。
ある企業では、この問題を解決するためにビジュアルコミュニケーションを導入しました。
作業手順を写真や図で示し、指示を出した後は必ず「それでは、これから何をするか教えてください」とYES・NO以外の答えを求める確認を行いました。さらに「わからないことは、むしろ積極的に質問して欲しい」という雰囲気づくりにも努めました。
今では、Cさんも「わからないことはその場で確認する」ことが当たり前になり、作業ミスも大幅に減少したそうです。
解消方法
①指示は具体的かつ明確に伝える
指示を出す際は、「何を」「いつまでに」「どのように」行うのかを明確に伝え、曖昧な表現は避ける
ように心がけます。
②図やイラストを活用する
口頭での説明だけでなく、図やイラスト、資料などを活用することで、視覚的に分かりやすく指示を伝えることができます。
③指示後に確認の時間を設ける
指示を出した後、相手が内容を理解しているかを確認する時間を設けます。「何か質問はありますか?」と問いかけるだけでなく、「今説明した内容を簡単に説明してもらえますか?」と確認することで理解度をより深く把握できます。
④書面での指示も併用する
口頭での指示だけでなく、メールやメモなどで書面に残すことで、後で内容を確認することができます。
思わぬすれ違い その4:「なぜ直接言ってくれないの?」
製造部門で働くフィリピン人スタッフのDさんは、ある日作業工程の改善案を思いつきました。
母国では、良いアイデアがあれば積極的に発言することが評価されます。そこで、朝礼の場で突然「この方法は非効率です!こうすれば良いと思います!」と発言しましたが、その場の空気が一瞬で凍りつきました。
日本人スタッフたちは「なぜ事前に相談してくれなかったのか」と困惑しました。一方、Dさんは「せっかくの提案なのに、なぜ誰も賛同してくれないのか」と落ち込んでしまいました。
この経験から、その企業では「改善提案ボックス」を設置しました。さらに、月1回の「改善提案会議」で、じっくりとアイデアを検討する場を設けました。
その結果、外国人スタッフからも多くの建設的な提案が寄せられるようになり、職場の雰囲気も大きく改善されました。
解消方法
①それぞれの解決方法の違いを理解する
問題解決に対する文化的なアプローチの違いを理解し、お互いの方法を尊重することが重要です。
②中立的な立場の仲介者を立てる
必要に応じて、上司や人事担当者など、中立的な立場の仲介者を立て、双方の意見を丁寧に聞き取り建設的な話し合いを促します。
③客観的なデータに基づいて議論する
個人的な感情や主観的な意見に偏らず、客観的なデータや事実に基づいて議論することで、冷静な問題
解決を図ることができます。
④合意形成までのプロセスを明確にする
問題解決に向けて、どのような手順で進めていくのか、いつまでに結論を出すのかなど、プロセスを
明確にすることで、関係者間の不安や不信感を軽減できます。
思わぬすれ違い その5:「なぜ飲み会に来ないの?」
「もしかして、うちの部署に馴染めていないのかな…」と営業部門の課長は、イスラム教徒のマレーシア人スタッフEさんのことを心配していました。
歓迎会や懇親会の誘いを毎回丁寧に断られ、「もしかしたら、職場の雰囲気が合わないのかも」と思い悩んでいたのです。
実は、Eさんは宗教上の理由でアルコールを口にすることができません。母国では仕事と私生活をはっきり分ける文化があり、業務後の付き合いに戸惑いを感じていたのです。
この状況を改善するため、ある企業では「ランチ交流会」を始めました。昼食時に部署ごとで集まり、時には手作りの料理を持ち寄って食事会を開催しました。
Eさんも得意のマレーシア料理を振る舞うようになり、自然と会話が弾むようになりました。
その結果、「食事を通じて互いの文化を知ることができ、かえって理解が深まりました」と、課長は笑顔で話していました。
解消方法
①参加を強制しない
飲み会への参加は任意であることを明確に伝え、不参加を理由に不利益を被ることがないように配慮
します。
②代替の交流機会を設ける
飲み会以外にも、ランチ会や社内イベントなど、アルコールを伴わない交流の機会を設けることで
外国人も参加しやすい環境を作ります。
③飲み会の目的を明確にする
飲み会を開催する目的(親睦を深める、情報交換を行うなど)を事前に伝え、参加者が安心して参加
できるように配慮します。
④個々の事情を尊重する
宗教上の理由や体質的にアルコールが飲めないなど、個々の事情を尊重し、無理強いしないことが大切
です。
思わぬすれ違い その6:「母国語で何を話しているの?」
休憩時間、ベトナム人スタッフ同士が母国語で会話を交わしています。近くにいた日本人スタッフが、なんとなく気になって聞き耳を立てます。
「もしかして、私たちの悪口?」
実は、これは多くの職場でよく見られる光景です。母国語での会話に対して、日本人スタッフが不安や疎外感を感じてしまうのです。
ある食品工場では、この課題に対してユニークなアプローチを取りました。「インターナショナルブレイク」と題して、休憩時間に外国人スタッフが簡単な母国語講座を開催したのです。
「コーヒーを飲みながら、ベトナム語で『おいしい』って言ってみましょう」 「フィリピンの挨拶をタガログ語で練習!」、在籍する外国人スタッフの母国語を披露してもらいました。
始めは緊張気味だった日本人スタッフも、徐々に外国語に興味を持ち始めました。
「実は彼らの会話の大半は、家族のことや好きな食べ物の話だったんですね」と、ある日本人スタッフは気づきを語ります。
解消方法
①母語での会話が必ずしも悪意によるものではないことを説明する
母語で会話するのは、単にリラックスしてコミュニケーションを取りたいという気持ちからである
ことが多いことを説明し、日本人の不安を解消します。
②日本語でのコミュニケーションを推奨する
可能な範囲で日本語を使ったコミュニケーションを推奨し、相互理解を深めるように促します。
日本語学習支援などを提供することも有効です。
③オープンなコミュニケーションを心がける
何か気になることがあれば、直接本人に尋ねるなど、オープンなコミュニケーションを心がけることで
誤解を防ぐことができます。
④多言語対応のツールを活用する
必要に応じて、翻訳アプリや多言語対応のコミュニケーションツールなどを活用することで、言語の
壁を乗り越えることができます。
まとめ 〜多様性がもたらす新しい可能性〜
ご紹介した現場での事例が示すように、特定技能外国人との協働には様々な工夫が必要です。
これらの「違い」は乗り越えるべき壁ではなく、むしろ職場を豊かにする貴重な機会です。
日々の小さな工夫と相互理解の積み重ねが、誰もが活躍できる職場環境を作り出します。異なる文化や価値観との出会いは、組織に新たな創造性と活力をもたらすのです。
私たち登録支援機関は、皆様の職場における特定技能外国人との協働を全面的にサポートいたします。
特定技能外国人の採用やコミュニケーションでお悩みの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
多様性豊かな職場づくりを一緒に目指しましょう。
特定技能外国人採用でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください!
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